居心地のいい場所
その姿を見つけて。
ロイはおや、と口元を綻ばせた。
ある休日。
書斎で調べ物があったロイは、その日の午前中ずっと書斎に篭りきりだった。
時計を見れば、お昼も回った時間だと言うのにが呼びに来ない。
時間に気付いたら空腹感を感じて、部屋を出てキッチンを覗けばテーブルにはお皿が並べられ、キッチンからはいい香りが漂ってきていて。
ランチは出来ていて、後はお皿に盛るだけという状態なのにの姿がない。
どうしたんだとキッチンから戻ると、…いた。
ソファに横たわって、眠っている。
エプロンをつけたままのその姿から、彼女はお昼が出来たと呼びに行こうか迷っていたに違いない、とロイは想像した。
部屋に篭って出てこないロイの邪魔はしたくない、しかし食事を抜かすのは彼女のポリシーに反する。
どうしようかと迷っている内に、眠ってしまったのだろう。
何せ昨夜は、今日が休みだからと思う存分彼女を愛したのだ。
無理させすぎただろうか、と苦笑しつつも反省も後悔もしていないから性質が悪い。
「?眠るならベッドに行こうか」
そっと囁き、眠る彼女を抱き上げると。
まるで子供のように無防備に擦り寄ってきて。
ロイは思わず笑みを深くし、そのまま寝室へは向かわずにソファに腰を下ろした。
は温もりを求めるように擦り寄り、暫く寝やすい場所をごそごそと探して。
安定すると、そのまま再び規則正しい寝息を立てる。
その仕種に、寝顔に、愛しさが溢れた。
この想いは、言葉にすら出来ない。
ただ愛しくて、たまらない。
「…。……」
無意識に零れる笑みと共に、愛しい名を繰り返す。
いつもなら返る彼女の優しい声は今はなく、穏やかな寝息だけが応えるように続いている。
まるで起きる気配がないのは、それだけこの腕の中が居心地がいいのだろうと自惚れてもいいだろうか。
溢れる気持ちと零れる笑み。
ロイはの身体を優しく抱き締め、そのまま腕の中の温もりにつられるように眼を閉じた。
たまにはこんな休日も悪くない、と、心の底から思いながら。
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